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職業紹介事業・職業紹介責任者・職業紹介責任者講習の解説

01職業紹介事業について

職業紹介事業は、わが国の労働力需給調整システムの中のひとつです。
労働力需給調整システムとは、労働力の供給側(働こうとする人)と、労働力の需要側(雇用しようとする企業等)を円滑に結びつける仕組みのことです。

職業紹介とは、求人申込及び求職申込を受け、求人者と求職者との間の雇用関係の成立をあっせんすることです。(職業安定法第4条)
この定義でいう用語の意味は次のとおりです。
求人:報酬を支払って自己のために他人の労働力の提供を求めることをいいます。
求職:報酬を得るために自己の労働力を提供して職業に就こうとすることをいいます。
雇用関係: 賃金を支払い労働力を利用する使用者と、労働力を提供する労働者との間に生じる使用・従属の法律関係をいいます。
あっせん: 求人者と求職者との間をとりもって、雇用関係が円滑に成立するように第三者としてお世話をすることをいいます。

求人者に紹介するため求職者を探索した上、当該求職者に就職するよう勧奨し、これに応じて求職の申込みをした者を紹介・あっせんするいわゆるスカウト行為を事業として行う場合も、職業紹介事業に含まれますので、当該事業を行うためには、職業紹介事業の許可を取得する必要があります。
いわゆるアウトプレースメント業(再就職支援業)についても、教育訓練、相談、助言等のみならず、職業紹介を行う事業は職業紹介事業に該当するものであり、当該事業を行うためには、職業紹介事業の許可を取得する必要があります。(平成11年労働省告示第141号、最新改正令和4年厚生労働省告示198号第六の六の(一))。

なお、「有料の職業紹介」とは、無料の職業紹介(職業紹介に関し、いかなる名義でも、その手数料又は報酬を受けないで行う職業紹介)以外の職業紹介をいいます。(職業安定法第4条)

また、職業紹介事業者は、国の職業安定機関及び特定地方公共団体、募集情報等提供事業を行う者又は労働者供給事業者と、労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整を図るため、雇用情報の充実、労働力の需要供給の調整に係る技術の向上等に関し、相互に協力するように努めなければならない、とされています。(職業安定法第5条の2)

職業紹介を「事業」として行うこととは、一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行することをいい、1回限りの行為であったとしても反復継続の意思を持って行えば事業性がありますが、形式的に繰り返し行われたとしても、すべて受動的、偶発的行為が継続した結果であって反復継続の意思を持って行われていなければ、事業性は認めらません。具体的には、一定の目的と計画に基づいて行われるか否かによって判断され、営利を目的とする場合に限らず、また、他の事業と兼業して行われるか否かを問いません。
しかしながら、この判断も一般的な社会通念に則して個別のケースごとに行われるものであり、営利を目的とするか否か、事業として独立性があるか否かが反復継続の意思の判定にとって重要な要素となります。例えば、職業紹介を行う旨宣伝・広告している場合、事務所を構え職業紹介を行う旨看板を掲げている場合等については、原則として事業性ありと判断されます。

有料職業紹介事業者が取り扱うことができる職業の範囲は、港湾運送業務(船内荷役、沿岸荷役、はしけ運送等に係る業務)と建設業務(土木、建築、解体等の作業またはその準備作業に直接従事する業務)を除いて、他のすべての職業について取り扱うことが可能です(無料職業紹介事業者は、原則としてすべての職業について取り扱うことが可能です)。(職業安定法第32条の11)
また、船員職業安定法第6条第1項に規定する船員については適用されません。(職業安定法第62条)

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02職業紹介責任者について

有料職業紹介事業者は、職業紹介事業を行う事業所ごとに、欠格事由に該当せず、また業務を適正に遂行する能力を有する者を、事業所専属の職業紹介責任者として自己の雇用する労働者の中から選任することになっています。ただし、有料職業紹介事業者(法人である場合は、その役員/個人の場合は本人)を職業紹介責任者とすることは、差し支えありません。(職業紹介責任者の選任義務:職業安定法第32条の14、同施行規則第24条の6)

職業紹介責任者は、当該事業所において職業紹介に係る業務に従事する者の数が50人以下のときは1人以上の職業紹介責任者を、50人を超え100人以下のときは2人以上の職業紹介責任者を、100人を超えるときは、当該職業紹介に係る業務に従事する者の数が50人を超える50人ごとに1人を2人に加えた数以上の職業紹介責任者を選任する必要があります。

職業紹介責任者を変更した場合には、変更のあった翌日から起算して30日以内に、当該事業者の主たる所在地を管轄する都道府県労働局を経由して、厚生労働大臣に届け出ることとなっています。職業紹介責任者の変更の届出に際して、新たに職業紹介責任者となる者が、やむなく届出前に職業紹介責任者講習会の受講ができない場合は、その後可及的速やかに受講すること(具体的には受講する職業紹介責任者講習を決めていること)を条件として届出することができます。(職業紹介事業の業務運営要領第3「許可基準」)

職業紹介責任者の選定にあたっては、次のとおり要件・資格が定められています。(職業安定法第31条第1項第3号の要件)

  • 未成年者でなく、法第32 条第1号、第2号及び第4号から第9号までに掲げる欠格事由のいずれにも該当しないこと。
  • 住所、居所が一定しないなど生活根拠が不安定な者でないこと
  • 不当に他人の精神、身体及び自由を拘束するおそれのないこと
  • 成年に達した後、3年以上の職業経験を有する者であること(有料のみ、無料はこの要件なし)
  • 過去5年以内に職業紹介責任者講習を受講していること
  • 有料の職業紹介事業の管理を適正に行うに足りる能力を有する者として、厚生労働省令で定める基準に適合するもの(職業紹介者責任講習における理解度認定試験に合格していること)
  • 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行うおそれのないこと
  • 虚偽の事実を告げ、若しくは不正な方法で許可申請を行った者又は、許可の審査に必要な調査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者でないこと
  • 外国人にあっては、一定の在留資格のあること
  • 国外にわたる職業紹介を行うにあっては、相手先国の労働市場の状況及び法制度について把握し、求人者及び求職者と的確な意思の疎通を図るに足る能力を有する者であること(許可基準)
  • 貸金業を営む者は登録、質屋営業を営む者は許可を受け、適正に業務を運営している者であること
  • 風俗営業等を行う者でないこと
  • 精神の機能の障害により職業紹介責任者の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者でないこと

有料料職業紹介事業者は、次に掲げる事項を統括管理させ、及び従業者に対する職業紹介の適正な遂行に必要な教育を行わせるため、法令で定めるところより、職業紹介責任者を選任しなければならないこととなっています。(職業安定法第32条の14)

  • 求人者又は求職者から申出を受けた苦情の処理に関すること
  • 職業紹介に係る求人者の情報、及び求職者の個人情報の管理に関すること
  • 求人及び求職の申込みの受理、求人者及び求職者に対する助言、指導その他の職業紹介事業の運営及び改善に関すること
  • 職業安定機関との連絡調整に関すること
  • 従事者に対し、職業紹介の適正な遂行に必要な教育をすること

職業安定法平成29(2017)年改正によって、職業紹介責任者の責務に、従事者(他の従業員)に対する職業紹介の適正な遂行に必要な教育(労働関係法令等)が追加されました。職業紹介責任者は、労働関係法令等に関する最新情報の収集と理解に努めるとともに、事業所内の他の従業員に対して教育を行わなければなりません。また、その実施した教育内容を事業報告書に記載する必要があります。

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03職業紹介責任者講習について

職業紹介責任者講習は、職業安定法第32条の14により選任を義務づけられている職業紹介責任者等に対し、法の趣旨、職業紹介責任者の職務、必要な事務手続等について講習を実施することにより、職業紹介事業所における事業運営の適正化に資することが、その目的です。(職業紹介事業の業務運営要領第7「その他の手続等」8職業紹介責任者講習)

職業紹介責任者講習は、原則として新たに職業紹介事業を行おうとする者及び既に許可を受けて職業紹介事業を営む者により職業紹介責任者として選任されることが予定されている者及び職業紹介責任者に選任されている者を対象として実施することとなっています。なお、各事業所の職業紹介従事者が受講することは差し支えありません。

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職業紹介責任者講習は、以下の事項を満たし、講習告示により、厚生労働大臣が、職業紹介事業の運営を適正に行うに足る能力を養成する職業紹介責任者講習を実施できる機関(以下「講習機関」という)として定めた者が実施するものとされており、一般社団法人日本人材紹介事業協会(略称:人材協)は、厚生労働省によって職業紹介責任者講習を実施できる機関として定められています。

職業紹介責任者講習の講習告示に定める講習機関は、定められた要件のすべてを満たすものと、厚生労働大臣が確認できた機関とすることとなっています。また、講習機関は、申出の際に確認を受けた事項の内容に変更があった場合は、改めて該当する事項について要件を満たすと確認を受けなければならないこととされています。

職業紹介責任者講習の開催にあたっては、定められた書類を厚生労働大臣(厚生労働省職業安定局需給調整事業課を経由)に提出することとなっています。なお、厚生労働大臣が講習機関と認めるまで2箇月程度を要することから、期間に余裕を持って関係書類を提出することとなっています。開催の申出が認められた場合には、厚生労働大臣により告示された日以降に、厚生労働省ホームページにその開催日時等が掲載されます。また、厚生労働省職業安定局需給調整事業課長から、当該年度の講習実施団体として登録された旨が通知され、講習における理解度確認試験に係る資料が交付されます。

厚生労働省ホームページへの講習日程等の掲載依頼及び受講者の募集開始等開催が予定される講習の日程等については、その開催予定日の前々月の末日までに厚生労働省ホームページに掲載することとなっており、講習の開催を予定する講習機関は、当該ホームページへの講習日程等の掲載を希望する日の2週間前までにその掲載を申し出るものとされ、講習開催予定の講習機関は、厚生労働省ホームページにその開催日程等が掲載された日以降、当該講習の受講者募集を開始することが可能となります。また、次のようなルールが定められています。

  • 講習機関は、開催者番号、講習会場番号、受講者番号、受講年月日、受講者氏名、理解度確認試験の得点を記載した受講者名簿を作成すること。
  • 職業紹介責任者講習終了後、速やかに受講修了者に対し、受講証明書を交付すること。
  • 受講者名簿は、職業紹介責任者講習終了後2週間以内に職業安定局長に提出すること。
  • 職業紹介責任者講習に係る課目ごとの講義時間及び講師の氏名、肩書きを記載した実施報告書を上記と併せて提出すること。
  • 上記の書類(厚生労働大臣に提出したものの原本)については、当該職業紹介責任者講習終了後5年間保存すること。

職業紹介責任者講習は、職業紹介事業の業務運営要領に定められた内容に従って実施することとされていますが、その際、対象者が職業紹介責任者講習を初めて受講する者か既に職業紹介責任者としての職務経験を有する者かにかかわらず、職業紹介事業の業務運営要領に記載の講義課目のすべてを受講する必要があります。また、理解度を確認するための試験(理解度確認試験)を実施することとなっています。なお、各講義課目の時間数が減少しない限り、講義内容を充実させることは差し支えないとされています。

職業紹介責任者講習のテキスト等については講習機関において定めるものとされていますが、職業紹介事業の業務運営要領に定められた資料を必ず含めることとされています。なお、人材協では会場集合型、オンライン型ともに、内容の充実したオリジナルのテキストを受講者に提供しており、講習の際はもとより、その後の実務対応にあたっても参考書として活用いただけるよう、内容に工夫を重ね作成しております。

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理解度確認試験の試験問題については、厚生労働省から配布される試験問題の中から、講習機関が10問選択した上で実施することとなっています。併せて、以下の事項が定められています。

  • 厚生労働省から交付した理解度確認試験に係る資料及び試験問題は、試験問題の作成及び試験の実施のためにのみ利用することとし、他の目的のために利用しないこと。
  • 講習機関は、試験問題を取り扱う範囲をあらかじめ届け出た者及び当日の講師に限定し、その内容を他に漏らしてはならない。また、試験問題は試験終了後回収すること。
  • 講習機関は、講習機関において理解度確認試験に係る資料又は試験問題の紛失、漏えい等が判明した場合は、直ちに、その日時、場所、内容、対処措置その他必要な事項を厚生労働省に報告すること。
  • 試験内容は講習ごとに変更することとし、同一内容の試験を連続して行わないこと。また、各講義課目から満遍なく出題するようにすること。
  • 講習機関は、各講習において実施した試験問題の内容及び問題ごとの正答率について、講習終了後2週間以内に厚生労働省に報告すること。
  • 講習において実施した試験問題及び受講者の答案については、当該講習終了後5年間保存すること。
  • 職業安定局需給調整事業課が定める「職業紹介責任者講習における理解度確認試験事務手引き」を遵守すること。

また、講習及び試験の適正な実施等に関して以下の事項が定められています。

  • 講習機関は、講習を受講した者から後日実施者に対して質問や試験における得点の照会等が寄せられた際には、その質問等に対して回答できるような組織体制としておくこと。
  • 講習機関は、講習の実施にあたり、講師の不慮の事故等により講習が中止となるような事態とならないよう、十分配慮した講師の配置を行うこと。
  • 講習機関は、講習の講義時間及び講習で使用するテキスト・資料を、当該講習以外の宣伝等他の目的の手段として活用してはならないものとする。
  • 講習の適正な実施等の観点から必要があると認められるときは、厚生労働省は講習機関に対して報告を求め、又は調査を行うことができるものとする。報告を求められ、又は調査の対象となった講習機関は、これに応じるものとすること。
  • 講習機関が適正に講習・試験を実施していないと認められる場合、講習機関が厚生労働省への報告又は調査に正当な理由なく応じなかった場合には、厚生労働大臣は、講習・試験の実施内容の改善又は講習の一部停止を指示し、又は講習機関としての確認を撤回することがあること。この場合において、講習、試験の実施内容の改善の指示を受けた講習機関は、指示に対する改善計画を厚生労働大臣に提出するとともに、誠実に改善計画を履行するものとする。
  • 講習機関としての確認を撤回された者については、撤回された日から3年の間、講習の実施について確認を受けることはできない。
  • 講習の受講及び受講証明書の発行に際して、なりすまし受講を防止するため、受講者の本人確認の徹底をすること。本人確認は、運転免許証、パスポート、個人番号カード等、顔写真付きの公的証明書にて確認を行うこと(顔写真付きの公的証明書を持っていない場合には、国民健康保険証等の公的証明書と顔写真付の社員証とを組みあわせること等により本人確認を行うこと)が望ましい。

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一般社団法人日本人材紹介事業協会
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